勾玉シリーズの作者による最新作。勾玉三部作の流れっぽい古代日本を舞台にしたファンタジーです。


坂東武者の家に生まれた十六歳の草十郎は、腕は立つものの人とまじわることが苦手で、一人野山で笛を吹くことが多かった。平安末期、平治の乱に源氏方として加わり、源氏の御曹司、義平を将として慕ったのもつかの間、敗走し京から落ち延びる途中で、草十郎は義平の弟、幼い源頼朝を助けて、一行から脱落する。そして草十郎が再び京に足を踏み入れた時には、義平は、獄門に首をさらされていた。絶望したそのとき、草十郎は、六条河原で死者の魂鎮めの舞を舞う少女、糸世に目を奪われる。彼女の舞には、不思議な力があった。引き寄せられるように、自分も笛を吹き始める草十郎。舞と笛は初めて出会い、光り輝く花吹雪がそそぎ、二人は互いに惹かれあう。だが、その場に、死者の魂を送り生者の運命をも変えうる強大な力が生じたことを、真に理解したのは糸世だけだった。ともに生きられる道をさぐる草十郎と糸世。二人の特異な力に気づき、自分の寿命を延ばすために利用しようとする時の上皇後白河。一方草十郎は、自分には笛の力だけでなく、「鳥の王」と言葉を交わすことができる異能が備わっていることに気づく…。平安末期を舞台に、特異な芸能の力を持つ少年と少女の恋を描く、人気作家の最新作。


というのが表紙の折り返しに書いてあるあらすじなのですが、非常に長い。長すぎて内容殆ど書いちゃってるんじゃないかと思ったぐらい。でも、590ページもあるので、このあらすじでもまだ半分くらいのところまでしか書いてないのですよ。もう読み応えはばっちりです!ちなみに私は一晩で読んでしまいました。読み終わったら朝の五時でしたよ。昔、シドニィ・シェルダンの本の帯にあったみたいな「読み終わると夜が明けていた」を実践しちゃいました。

時代は平安末期ということで、貴族の時代から武士の時代への移行期が舞台です。歴史上の人物もたくさん出てきます。あまり私は歴史に明るくないのですが、源平ぐらいは知ってる。でも、源氏が敗れて東国に落ち延びるあたりはよく知らないかなぁ。どちらかというと、義経が出てくるあたりのほうがよく覚えてる。

とにかく、朴念仁な草十郎と勝気な糸世の恋とおしゃべりな鳥彦王がいいのです。可愛らしい。いとおしいなぁ。
個人的に非常にツボな場面がいくつかあって、

「おれはおまえが好きだ、自分でもびっくりするが」とか、
(・・・あたたかく見守りすぎだ・・・)のあたりや、

「・・・ひょっとして、おれが好きか」
「今薬をぬったところ、ぶってやりたくなる、あなたって」のあたりも素敵すぎ。
やっぱり荻原さんの描く恋模様がすごく好きだなぁ。勾玉三部作読み返したくなりました。

あとがきに、「できれば、また、このつながりで物語を編んでみたいです」とあったので、非常に嬉しいです。いまからすごく楽しみです。

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