今より少し未来、地球温暖化の影響で溶けたヒマラヤの氷河の中から「方舟」が出てきたところから物語は始まる。

主人公は溶けた氷河による下流の被害を少しでも減らすためのダムを建設する会社に勤めている。そして、「方舟」の第一発見者でもある。「方舟」を発見したばっかりにすごい騒動に巻き込まれてしまいます。

溶けた水を受け止めたダムに浮かんでいた「方舟」は、木製で鑑定結果は約5千年前のものだという。気になる船の積荷は、非常に保存状態の良い大量の木簡。木簡にはひたすら蓮華模様がびっしり描かれている。この模様はメッセージなのか?

蓮華模様の謎を解けると触れ込んで研究チームに参入してきたロータスという日本人と関わったばかりに、主人公は有給を使わされ、職を辞めさせられ、退職金まで巻き上げられ、前歯を一本失くしてしまう。そこまでの事態になっても主人公がロータスについていってしまうのは、ひとえに「デザイナー」のメッセージを知りたいがため。ロータスはメッセージ解読のために冷静に冷酷に計画して、人を、組織を巻き込み、メッセージ再現のために動く。最終的には数万人巻き込んでの大騒動を起こすまでに至る。

読んでてすごく面白いと思ったのは、メッセージを解読して、それがどうも遺伝子情報だとわかってきて、木簡の設計図どおりに再現してしまおうとしているあたり。何が生まれるのか?どんなメッセージを持っているのか。本当に生まれるのか?という展開が面白かった。
その後の大衆を巻き込んでの大騒動も、知的な戦略が多くて楽しめた。ラストは微妙な気もしたけど、前回の宇宙の作り方にしてもこういう今現在答えの出てないテーマを扱ったときには避けられない問題だと思う。

「神さまのパズル」も面白かったけど、こちらの方がぐっと良くなりました。専門用語もそんなわかりにくくなかったし、次回作が楽しみな作家さんです。

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