図書館の問題利用者とはどういう人たちを言うのか、またそういう人々とどう対応していけば良いのかということが書かれた本。

かるーい気持ちで借りてみたのですが、思っていたよりも内容がまじめでした。もっと「私が出会った不思議なお客さん」みたいなのを想像していたので。

内容は三部構成で、まず第一部ではどんな利用者が問題を起こすのかが問題利用者の種類別に描かれていて、次に第二部では問題点についてケース別に書かれていて、最後に第三部ではどのように問題解決を図るべきなのか指針が書かれています。

本書で図書館における問題利用者として挙げられている人々は、ホームレス、精神障害者、ヤングアダルト、高齢者、身体障害者などです。もちろん世の中の人々で上記のカテゴリに入る人々が全て問題利用者だということではないです。対応の難しいケースの人々ということでしょう。

ホームレスは、安寧の地として公共図書館を利用します。一日中いたって怒られないし、時間つぶしには最適なものがいっぱいあります。もちろんただ図書館を利用するのは問題行動ではないです。たいていのホームレスは大人しいし、まあ無害です。自分の今の状況が気に入らなくて自暴自棄になってる人もいるかもしれないけれど、それはなにもホームレスに限ったことではないです。問題なのは彼らの体臭です。

程度の差こそあれ、香水のつけすぎで匂いがきついのぐらいまだましだ、というぐらいの体臭の人もいます。
アメリカには180センチ離れたところまで体臭が届く場合は退館させることができる、なんて決まりのある図書館もあるらしいです。

ひとりの悪臭が他の多数の利用者の快適な利用環境を損ねているのなら、図書館としては何らかの手を打たねばならないとは思うのですが、難しい問題です。根本的な解決を図るなら、図書館だけでどうこう出来る問題じゃないですし。「いつでもどこでもだれにでも」利用してもらうのが公共図書館の理念です。もちろんそこにはホームレスだって入ってるわけで、利用するなとはいえないです。せいぜい「あなたの体臭が他の人の迷惑になってるので気をつけてください」とか言うぐらいでしょうか。それだって聞き入れてくれなきゃ意味ないしね。
景気が良くなって福祉にお金がたくさん回されたらなんとかならないかなぁ。

精神障害者の問題利用者の問題点は、予測不能な言動や行動が職員を怯えさせるという点です。これは、職員に心理学の知識があって精神障害に理解が深ければ避けられる問題です。心理学を修めていないのであれば、研修を受けるなどしてどのような対応が最善か、またはしてはいけないことは何かを学ぶのが良いとあります。

あんまり日常的なケースではないかもしれませんが、精神的に弱っている人の中には、不満のはけ口として図書館に来る人もいます。そういう人たちは大抵自分の話を聞いて欲しいのです。もしくは自分の要求を通そうとします。そういうときは、職員はその人の話を聞いてやり、けれど要求が妥当なものでなければ、毅然と断るのが良いということです。近頃の司書は、カウンセラーのような能力も求められるようです。

ヤングアダルトや高齢者の問題利用者とされる人たちは、それぞれの世代の特性(エネルギーに満ち溢れているゆえに騒々しいとか、加齢による視覚聴覚の衰えだとか)ゆえに対応が難しいケースで、職員が彼らに対して敬意を持って丁寧な対応をするのが望ましい。

耳の遠い人と話をするのは難しい。必然的に大声になってしまうから、静かな図書館ではかなり響く。カウンターの職員も声を張り上げるから、まるで喧嘩しているみたいにも見える。あまりよろしくない光景だ。そうでなくてもカウンターでの対応が怖い人もいる。カウンターでの応対が日常的になってるから雑になっちゃうんでしょうか。問題利用者と対応したりしてカリカリしてるのかもしれない。あまり問題にならない程度のことだけど気になるなぁ。

最後の章に「傾聴法」というものが出てくる。
これは、クレーマーに対して効果的な話法らしい。
傾聴法とは、話し手の言葉の裏にある意味や感情をじっくり聴いて対応するということ
というもので、相手の話に合わせて理解をしているということをアピールして、クレーマーの気を鎮める方法らしい。
でも、例として書かれている文章の中には、なんだか慇懃無礼でおかしな感じがするものもあった。
でもまあ、頭からそれはできませんの一点張りじゃ納得してもらえないだろうし、そちらの言い分は理解できるのですがみたいな態度を見せたほうが、ことはうまく運ぶと思う。

ほかにも、大学図書館で起こっている問題やセクシャルハラスメント、資料の切り取りや施設の破損などの破壊行動などが取り上げられている。
とにかくかなり勉強になる本でした。

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