キャサリン・ウィンスロウ嬢再び。

動物に変身する能力を持つ異種人類<アナザーレイス>と変身能力を持たない無形種<ノンフォーマー>が暮らす世界での大冒険活劇。

今回は、この世界の成り立ちがよくわかって面白い。西大陸の歴史や、アナザーレイスたちの暮らしぶり、アナザーレイスに敵意を持つ人々の存在が明らかになる。自分たちを万物の霊長と位置づけ驕る一部の人間は、アナザーレイスたちを自分たちより下に見て、人獣だのけだものだのと呼ぶのだ。

身体能力では明らかにアナザーレイスたちの方が優れており、考え方の面でも柔軟だ。とても賢く力強い生き物なのだ。彼らは非常におおらかだ。西大陸に流れ着いた人間たちを排除することなく受け入れ、住まわせてやった歴史があるのだ。しかし、ヒトは貪欲だ。西大陸全てを自分たちのものにしたい、けだものどもを追い出せとか考える輩が現れるのだ。

今回はそんな輩が騒ぎの原因。その渦中にキャサリン・ウィンスロウ嬢も巻き込まれてしまう。発端はキャサリンが芸術の時間に描いた一枚の絵。この世のものとも思えぬ、美しい色とりどりの羽を身に纏った人物の絵。それが、いろいろと思想に問題のある輩の目に留まって、騒ぎになるのだ。

かなりシリアス。アナザーレイスを蔑視する人たちのエピソードが胸に痛い。なんて残酷なんだ。ヒトってああまで醜くなれるんだ。キャサリンが憤るのもっともだ。同じ人間として恥ずかしいだろうな。

あと、このお話って異類婚礼譚がモチーフなのかな。夕鶴みたいなの。ああいうお話って世界中にありそう。

「レディー・ガンナーと宝石泥棒」(茅田砂胡)
レディー・ガンナーシリーズ第三弾。
今回は、前回のお話で知り合ったミュリエル嬢のところへ遊びにいく船旅の途中から始まる。

船旅ももうすぐ終わりというある夜、キャサリンはなにやら不穏でロマンチックな会話を立ち聞き(正確には横になった状態で)してしまう。どこかの令嬢とその召使の会話なのだが、二人は許されぬ恋に落ちており、船を下りたら駆け落ちする相談をしていたのだ。

横になっていたため顔は確認できなかった。キャサリンは悩む。駆け落ちは、彼らの法ではかなりの罪だからだ。本来なら、すみやかに誰かに知らせて阻止する義務がある。しかし、情熱的な二人の様子に、誰にも知らせないことにした。お付のニーナを除いて。

船を下りれば、もう会うこともないだろうからだ。それに駆け落ちなんてロマンス小説のようだ。年頃の娘さんなら一度は憧れるシチュエーションだろう。

しかし、もちろんそんな訳にはいかなかったのである。キャサリンは思いがけず二人に再会し、一連の騒動に巻き込まれてしまうのであった。

前回に比べると明るい感じ。テンポ良く進みます。一巻で登場した懐かしい人物も再登場します。

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