語り手の緒方君と頭の回転の速い子どもらしくない言動をする島崎君は、中学一年生。二人は長年良いコンビを組んでいます。

学生が主役のミステリって身近にありそうな警察沙汰にならない事件を扱ったりするけど、そうでもなくて、かなり真剣な事件を追ってます。

「今夜は眠れない」
初夏。うちに突然五億円が転がり込んできたら?いきなり空から降ってきた大金が今まで気付かなかった家族の問題を露にする。緒方少年どうする?どうなる!?

宝くじで一億円当たったらきっとこういう事態になるんだろうなぁと思った。世間の反応って決して優しくないのよね。すごいって騒ぎ立てて、なんでお前だけってやっかまられて、親戚が増えて借金の申し込みが来て、そして宗教やらなんとか団体とかから寄付やらお布施やらの申し込みが殺到するんだわ。こんなときにこそ本当の友人てやつがはっきりするんだろうな。

そんな外野の騒ぎにもうんざりなのに、本当の騒動は家の中にこそあったりして、緒方少年は大変だ。そして真相の裏には更なるびっくりが待っていて、二度びっくりする夏の終わり。


「夢にも思わない」
秋。風流な催しの会場で風流じゃない死体の発見。死体が誰だか確認して卒倒する緒方少年。事件の調査を進めるうちに、微妙に距離を置く二人。明らかになる少女たちに向けられる悪意、憎悪、妬み。島崎の不審な行動、それに隠された真実とは?ほろ苦い年の終わり。

誰も彼女を責められない。すごく怖かったんだろう。でも、彼女がしたことを彼女自身が忘れてしまうことは許せない。なかったことにしてしまうことは見過ごせない。そんな少年の気持ちもわかるけど、彼女の気持ちも分かる。同じ立場に立ったとき、しないとは言えないから。確かにその行為は人として恥ずべき行為ではあるけれど、人は弱いから。
せめて忘れないこと、胸に刻み付けることが贖罪になると思う。

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